僕の望まない世界のあり方があったのだ。 僕の大嫌いな世界のあり方があったのだ。

黒い虹彩で生きる僕らの世界は1枚の紙で価値が決まる。 純粋な血統というのはどこにおいても愛されるものなのだ。 頭のよすぎるひとは世界の矛盾に気付いてしまう。 だからおかしくなってしまうんじゃないのかなと常々思っていた。 それで、たぶんそれは正しい。 目の前の人を見ていると僕はいつもそう思うのだ。 (そして少し悲しくなる。)

「はかせ」と呼ばれるこの人はいつも幸せそうに息をしている。

「シロ、おいで」

この人の手はとても暖かい。 何かを生み出す人の手だと思う。 命を作る人の手だと思う。 だから、この人はあの世界に順応できなかったのだろうとも思う。 僕の1番古い記憶の中には既にこの人がいた この人は僕の人生をよく知っている。 ダンボールから僕を抱き上げたこの人は、僕にとっての神様なのだ。

(首輪も血も捨てて、あなたも無秩序の世界にくればいいのに。)



(美しい世界のあり方について)