雪のような透けるように白いその肌は冬の寒さを強調させているように感じた。
髪の先まで白く染まったあの人は陶器のような白い顔で鼻頭を赤くしながら白い息を吐いていた。
暑さにも寒さにも滅法弱いこの人は夏は太陽に溶かされるのではないか、冬はこの白さに消えてしまうのではないか、とおれは要らぬことを思ってしまう。
その指先はいつもひんやりと冷えていて、この人は熱がないのではないかと不安になったこともある。
生きてますよね、と問うと当たり前だと頭を小突かれた。
おれは嘘と本当を見分けることなどできないから、そのままの言葉を受け止めて飲み込んで消化する。
生きている。それは呼吸をしているということで、体温があるということで、心臓が動いているということだ。
道端には子どもたちが作ったであろう雪だるまが静かに佇んでいた。
青色のバケツを頭に乗っけて赤々とした橙色の人参を挿した真っ白な雪だるまは既に歪に溶け始めていて、
その橙色と青色がなければこの銀世界に溶け込んでしまっていたであろう冬の世界の住人は、その黒々とした瞳でおれとあの人をじっと見ていた。
「そのまま溶けてしまっても、きっと、誰も気づきませんね」
翡翠色の目が何か言いたげにおれを見ていたが、寒さのせいで口を開くのも億劫なのだろう。
彼は何も言わずにサクサクと音を立てて雪を踏みながら先を歩き始めた。
白い雪が降る。白い髪が揺れる。見失うんじゃない。早く来い。招くように、誘うように、その白は揺れる。
寓話の姿を借りた魔物よ
title 天来(http://ahh.iaigiri.com/)