「おいで糞餓鬼」
ゆらりゆらりと妖しく招く手は白い
三日月を逆さまにした深淵から覗く紫
真直ぐに切りそろえられた前髪は黒い
美しい少女の姿で鬼は笑う
「恐ろしいか?」
見えない首輪で飼いならされる
見えない銃口を突き付けられる
「わたしは死なないし、死ねないのだよ」
老いていくほど(置いていくほど)鬼はぼくを美しいという
赤い舌先が鋭い犬歯が白い咽喉が、完璧な絵のよう
永遠のロリータは銀のナイフをぼくに手渡して口づける
(そうして、ぼくは十字架を手放した)