誇り、くり抜いて、ならべる。
葬列、消えていく、その咽元。
聡明、融解してゆく、脳味噌。
恐怖、名前のない、その風景。
網膜、あなたの声を、覚える。
ああ、愉快愉快、首が落ちる。
さあさあ、幕間劇の時間です!




融解する世界の話




さて名前をなんと申すか。 わたしの名前はなんだったか。 まあ、好きに呼んでくれてかまわないよ。 そうだね、呼ぶのに困るのなら×××とでも呼んでくれてかまわないよ。 変な名前だって? そうだろうね。 だってわたしには名前が沢山あるのだから。 ああ、そんなことよりわたしには時間がないんだよ。 名前の話など、たいしたことではない。 ただの記号じゃあないか。 個別を識別するためのラベル。 そんな程度のものなのだからね。 ああ、実に君は聡明そうだ。 君ならわたしの話を聞いてくれるかもしれないな。

わたしは名前を探しているんだよ。 え?名前などたいしたものではないと今言ったところだって? そうだなあ、探し物はわたしのものではなくわたしの大事な友人のものなのだよ。 わたしの大切な友人、彼は名前をなくしてしまってね。 わたしが彼にであったとき、彼はすでに名前をなくしていてね、わたしはそれが知りたくてたまらないのだよ。 彼ほど聡明な人をわたしは知らない。 そんな彼に与えられた名前はきっと至高の宝石のように美しく価値があるのだとわたしは思っているんだよ。 うん?だから、彼以外の名前などたいしたものではないのだよ。 もちろんわたしの名前もだがね。 ところで君の名前はなんだったかな? ああ、○○か。 いい名前だ。 きっと君は春に祝福されて生まれたのだね。 名はその人を現すとはよくいったものだ。

ああ、何の話をしていたかな? ネジ巻きの話だったかな。 え?友人の名前?何を言っているんだい。 わたしに友人などいないよ。 繋がりなど、不必要だ。 依存することは堕落することだ。

ところで、君の名前はなんといったかな。


(ノイズ)
(機械音)
(ブツッと途切れる音)


(終幕)