炭酸水で満たされたエメラルド色の硝子瓶の中には虹色の魚が住んでいた。
透き通った透明な声で彼は歌うように話すのだった。

「お嬢さん、あなたはとても咽喉が白いのですね」

エメラルド越しの世界がどんなものなのか私にはわからない。
ひょっとしたら彼のいう「白」と私の思う「白」は違うのかもしれない。
もしかしたら彼は正しい白を見たことがないのかもしれない。
(じゃあ本物の白とはとは何だ?白に本物も偽物もあるのか?)

「正解などないのですよ」
「どうして?」
「曖昧で有限の世界に求めてはいけないものだからです」

硝子に触れるとひやりとして温度が奪われていくようだった。

「あまり温めないで下さい」
「どうして?」
「私はこの中でしか生きられないから」

魚はぶくっと泡を出してひらりとその尾を揺らす。
反射した光が屈折して鈍く光った。